水もれバケツ

 
 
むかしむかし、あるところに美しい庭がありました。
 
 
 
 
庭師はこの庭をたいへん自慢にしていて、毎日、骨身惜しまず世話をしていました。
 
 
 
 
彼は毎日、庭の奥の小さな物置小屋に行き、バケツを取り出します。
 
それから近くの小川から、輝くばかりに澄んだ水をくみあげて、バケツを下げて小道づたいに花壇に運びました。
 
 
 
 
バケツは二つありました。
 
ひとつは、園芸センターで買ったばかりのピカピカひかる新しいバケツでした。
 
もうひとつは、使い古したみすぼらしいバケツで、とっくに用済みになってもよさそうに見えました。
 
 
 
 
庭師は毎朝、二つのバケツに水をくみ、両手に下げて花壇に運びました。
 
新しいバケツはうぬぼれやで、自分なら必要なだけの水を一滴もこぼさずに花壇に運んでいけると思っていました。
 
みすぼらしい古バケツは、穴があいて水もれする自分を恥じていました。
 
 
 
 
庭師が花壇に着くまでに古バケツの水はずいぶん減っていたのです。
 
花壇に運ばれる途中、二つのバケツはときどき話し合いました。
 
「ごらん、僕がどんなに有能か」と新しいバケツは自慢しました。
 
「僕のように新しいバケツがあるから、庭師は毎日、花にきちんと水をやることができる。きみのような古バケツをどうして捨てずに取っておくのか、ふしぎだよ。きみなんか場所ふさぎなだけなのに」
 
みすぼらしい古バケツは、おずおずとこう答えました。
 
「わたしが役立たずだということはわかっています。でも精一杯やるしかないんです。庭師が私を使ってくれるだけでもありがたいと思っています」
 
ある日、庭師は二つのバケツのやりとりを聞き付けました。
 
花壇に着いたとき、庭師はいつものように新しいバケツを使って、花に水をやりました。
 
 
 
それから古いバケツに半分ほど残っていた水を花壇にまきました。
 
庭師は空っぽになった二つのバケツを取り上げて言いました。
 
 
「ありがとう。ご苦労さまだったね。わたしはこれからきみたちを物置小屋に返しに行くが、みちみち、小道に目をくばってみたまえ」
 
 
二つのバケツは庭師に言われたように、物置小屋にもどる途中の小道に目をくばりました。
 
 
 
小道の片側……庭師が新しいピカピカバケツを下げて歩いたほうは、乾いた土が広がっているだけでした。
 
 
けれどももう一方の側……古い水漏れバケツを下げて歩いたほうには…
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
新鮮な緑色の若芽がズラッと一列、かわいらしい小さな頭をならべていました。
 
 
二、三週間後にはみずみずしい野の花が庭の入り口までさわやかに咲きかおっていることでしょう。
 
 
 
 
 
 
 
またあした
 
 
 
 
 

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